各都道府県の地方最低賃金審議会による2018年の最低賃金の申請が行われている
多くの地方で国の審議会の決めた目安を上回る方針だ
四国4県の地方最低賃金審議会による2018年度の最低賃金(時給)の答申が9日出そろい、引き上げ幅は25~26円となった。4県とも現行方式となった2002年度以降で最大の上げ幅。国の審議会が示した目安を1~2円上回った。経営側には異論も多いが、都市部への人材流出防止や格差是正を考慮した。
労使の代表らでつくる高知地方最低賃金審議会が9日、18年度の県内の最低賃金を17年度より25円引き上げて時給762円にする答申を高知労働局長に提出した。最低賃金は労働組合のない中小・零細企業を含めた労働者に正規・非正規を問わず適用される。
香川は792円(引き上げ額26円)、徳島が766円(同26円)、愛媛が764円(同25円)で、4県とも3年連続で20円以上の引き上げ。異議申し立ての手続きを経て10月以降に適用される。
四国のような65歳以上の高齢者が人口に占める割合が30%を超える地域ではとにかく人材確保が優先となっている
そのため、各県の最低賃金の申請はやむを得なく国の目安より若干高めの最低賃金での申請を行うようだ
ここを見ても企業が人出不足に苦慮している状況が見て取れる
もくじ
国の最低賃金の目安はどのようにして決まるのか?
国の最低賃金の目安を決めるのは厚生労働省
地域別最低賃金は、(1)労働者の生計費、(2)労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定めるものとされており、「労働者の生計費」を考慮するに当たっては、労働者が健康的で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされています。
つまりは物価の上昇と企業の支払い能力によって決まると言っていいだろう
世の中の物価、消費者物価指数が上がれば賃金も上がらないと生活に支障をきたす
何より消費が望めないため企業も売上を伸ばすことが出来ない
そのため物価の上昇分と同等かそれを上回る賃金の上昇が必要となる
だが、それに任せていては企業の賃金支払い能力に見合わない場合がある
現在の賃金でなんとか維持している経営も賃金の上昇で破綻する可能性もあるからだ
こうしたことを踏まえ、政府は今年の最低賃金を3%上げる方針を決めた
2017年度最低賃金(厚生労働省HPより)
2018年度の最低賃金は10月より適用されることとなる
経営に苦しみながらも人材確保を優先
現在、多くの中小企業では苦しい経営状況にあるようで、従業員の望む賃金アップは厳しいところ
ただ、それ以上に現状厳しいのが人員の確保であるようだ
2018年7月の人手不足関連による倒産は41件となっている
多くの中小企業では求人広告に対して電話すらかかってこないということを耳にする
企業の財務状況以前に従業員が不足していたのでは、経営が成り立たない
したがって、企業は利益の確保より従業員の確保に重きをおいている場合が多い
今回の四国4件の国の最低賃金の目安を上回る申請もこういった背景が存在する
賃金アップで人材確保、だが経営は・・・
最低賃金で従業員を雇用している会社、企業は特に最低賃金を上げることによる影響は大きいだろう
求人による賃金を上げることはもちろん、現在雇用している従業員についても同様に上げなければならない
経営において最も大きな支出の一つが人件費であることはどの企業でも当てはまることであり、この部分が単純に支出増となるのは痛手でしかない
企業が生き残るには業務の効率化を進めるか事業の縮小を迫られることになるだろう
AI導入やロボット化による効率化をよく耳にするが、サービス業などには現在の業務を人間の手以外のものに委ねるほど技術が進歩していないように思われる
またそういったものが導入出来る適当な業務があったとしても、それらの導入費用及び維持費のために躊躇する企業も多いだろう
人間にとってかわるAIやロボットは多くの導入実績や政府の補助金がなくては、中小企業にとって夢のような話でしかない
そのため、当面は経営を圧迫しようとも人材確保のために賃金アップは避けては通れないのが現状なのだ
外国人労働者の採用も検討すべき時代となった
中小企業にとって単純労働を外国人労働者に委ねることも検討しなければならないだろう
政府は人手不足による経営難に対応するために「外国人労働者」の拡大を打ち出した
2025年までに50万人を超える見通し
これに対し「人件費の低下」や「公的サービスの問題」また外国人受け入れより現労働者の賃金アップをとの声がある
だが、はたしてそれらの意見は現場の人事担当や雇用者の事情を正しく反映しているだろうか
人材不足は現在その企業で従事している労働者へも負担を強いている
中には企業のために身を犠牲にしてまで不足人員分の労働をこなしている者もいるだろう
雇用者側もいつまでも彼らのような真摯な気持ちを持った労働者に甘え続けていられない
彼らがそれを苦に辞職したり、体を壊してしまってはその企業にとって大きな損害となるからだ
そんな彼らに賃金を上乗せすることが解決方法と言えるのだろうか
外国人労働者採用を懸念する気持ちは雇用者、労働者ともにあるだろう
ただ、「会社を維持する」信念のもとに外国人労働者を雇用することは誰にも責められるべきではない
そのような切迫した事情にある中小企業が多いことを世の知識人や経済評論家の方々はご存知ないのではないだろうか
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